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tag:ホテリエ

川淵は、ベルボーイ時代にずっと疑問を持っていた。

海外のホテルのなかには、宿泊客以外を中に入れないホテルもある。

それが日本になると、ホテルを利用していない人間が、ホテルの玄関に立ち寄り、タクシーを手配させる。ホテル付近に降車したバスの客が、平気な顔してホテルマンを呼び、荷物を持たせ、タクシーまで案内させる。

対価のないサービスが、日々の業務にあることを苦々しく思っていた。

 

そこで、川淵は考えた。

ならば、お金を払わなければ、ホテルに入れないようにしてしまえばいい。

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4月。とある高層ビルの会議室。

 

「採用期間は早ければ、早いほど、学生を獲得しやすい」

 

ザ・サラリーマンといった感じの男が熱弁を奮っている。

 

その隅で、この場には似つかわしくない、今風の30代半ばの男が愚痴をこぼしている。

 

「なんで、俺も出席しなきゃいけないんすか。」

 

「いいじゃないか。何事も勉強だよ。」

 

ナイスミドルが、今風の男をなだめる。その貫禄の前では、今風の男は、新入社員にしか見えない。

 

「マジ、ハメられたわ。前回の宴席の時も・・・」

 

そうヒートアップした所で、ザ・サラリーマンの視線が、今風の男に向かった。

 

「中田。君はどう思う?」

 

ナイスミドルが笑う。

 

「ちょ、上川さん。笑い事じゃないですよ。」

 

「質問しているのは、上川さんじゃない。私ですよ。」

 

「分かってますよ、西澤さん。」

 

中田が渋々と答える。

 

「新入社員採用試験を早く開始したって、どうせ意味ないですよ。」

 

会議を無力化するような発言に、管理職たちがザワめくが、上川だけは優しい表情で、下を向いて聞いている。

 

「だって、考えても見てください。今年の人気企業ランキング見ましたか?ウチみたいな、新興企業は入っていない。というよりも、ホテル業界は3Kだ、なんて言われていますからね。飲食業界がブラック企業として、取り上げられているのもダメージっすね。」

 

その冷静な分析を予想していたかのように、上川は頷く。ザワついていた管理職たちも静まり、いつしか、中田のプレゼンテーションの場となっていた。

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